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2007年5月 6日

ろう者間会話での調整

昨日,5月5日は先日の調査のフォローアップ.20分ほどの録画資料を,協力者2人に確認しながらインタビューをしてきました.協力者の方々はもちろんのこと,セッティングなどで世田谷福祉専門学校の学生さんにも多大なるご協力をいただきました.この場を借りて御礼申し上げます.

さて,最近は会話分析でいうところのrepair,もう少し大きい枠組みでは言語管理でいうところのadjustmentを中心に手話会話での話順交替を考えています.今回の調査でもそこを重点的に確認しましたが,一番気になっているのは相手のどのような反応を調整開始のトリガーとして認知しているのか(反応の有無も含めてどんなタイプがあるのか),そのトリガーが「発話の内容理解の問題」や「意味の曖昧さの解消」などのどのようなゴールに結びついているのか,といったことです.つまり話順交替での問題を,逸脱から調整実施までの一連の言語管理プロセスとして理解しようとしているわけです.

それからもう少しシステマティックな話だと,話順交替時に現れる「重なりoverlap」のタイプについても少し確認してきました.今のところ2つはありそうだと思っていて,1つは現在の話し手が交替時にできる隙間を埋めるように同じ表現を繰り返しているタイプのもの,もう1つは現在の聞き手が相手の発話内容を理解した時点で開始するタイプのもの.それぞれのタイプを「話し手・聞き手の双方からみた場合」で記述できていないという欠点があるわけですが,フォローアップで確認できた内容からなんとか見通しがつけられそうだと感じています.

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2007年1月26日

リテイク中

書いていた論文にコメントがついて返ってきたので書き直しを始めています.

日本手話話者が会話場面でしている調整行動について,調査協力者へのフォローアップ・インタビューを基にして分析したものですが,調査資料を見てみると「調査場面で話をしている」という意識がとても強くでていました.FUIでもその報告がかなり多くて最初はどうしようか少し困ったのですが,彼・彼女らが何を問題だと感じていて,対処するためにどんなバラエティを駆使しているのかが見えてきておもしろいです.

ここで言っているバラエティというのは,表層にでてくる現象自体のバラエティという意味だけではなくて,同じ問題に対する調整が異なる調整行動につながっていたり,異なる問題に対する調整が同じ(ように見える)調整行動につながっていたり,という意味でのバラエティです.表層に出てくる現象については少なからず研究がありますが,今までの日本手話研究では「なぜそのような調整行動にいきついたのか」という点について調査協力者の意識をあまり拾ってきていない,つまりプロダクトの部分しか扱ってきていないので,今書いている論文ではプロダクトが産出されるまでのプロセスも含めて記述し分析していくことの重要性を方法論的,理論的に補足して,今後の研究を広げていくことができそうだと思っています.

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2006年12月10日

ろう者の会話管理

つい最近やった調査から,ろう者が会話のなかでどんな調整をしているかについて考えています(元々は会話中の沈黙を考えようと思って計画した調査だったのですが,諸事情で後回しにすることに).

中身を組み立てるときにもっともリファレンスとして使っているのは協力者へのインタビューですが,彼・彼女たちからの報告をながめていると手話言語だからといって音声言語と違うことをしているわけではないということがよくわかります.例えば「相手によってキュードスピーチを使う/使わないを選択している」というのはメディアの選択という意味ではユニークな問題かもしれませんが,もう少し大きく相互行為に臨む場合の事前調整と考えるとかなりユニバーサルな問題です(ちょっと飛躍しすぎでしょうか).また「(会話を)盛り上げなければならないと思ってたくさんしゃべった」という報告は,必ずしもろう者に特有の調整行動だとは思われません.相互行為として手話会話と音声会話を比べてみると共通している部分がかなりあるわけですね.

つまり相互行為を見るときに,観察された事柄をろう者同士の会話だからといって「ろう者に限った話」として扱うべきではないというのが一番のキモ.扱いたい対象(文構造を見るのか,表情と意味との関係を見るのか,など)にもよるので一概に言えないことなんですが,そういう風に考えておくことも大事なことなんじゃないかなと思っています.

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2006年11月20日

何か還元できただろうか

先々週から調査に取りかかっていたのですが,昨日で一段落しました.今回の調査で見てみたかったのは,ろう者が会話を(もちろん手話で)するときに沈黙のコントロールをどのようにしているのだろうかということでした.分析はこれからなので詳しいことはいずれ書くとして,タイトルにした「何か還元できただろうか」というのは,いつも気にしていることですが,調査に協力してくれた人たちに対して私は何かを提供できたのかどうかということ.

研究なり分析なりした結果を例えば教育に活かすとか,世に広く知らしめて新しい動きを作るとか,そういう社会に対する還元は当然あるでしょう.でも実際に「私」の調査に協力してくれた「その人たち」に対して何か還元できるものを少しでも多く作れないだろうか,ということも気にしなきゃいけないなと思っています.つまり「私」と「その人たち」の関係の中で,ということですね.とはいえ,いつもそうできるのかというと,なにがしかの調査をしたことがある方はわかると思いますが,そうではないことの方が多いです.こちらの手違いで相手に余計な手間をかけさせてしまったり,そもそも調査という特殊な環境に相手をおくことでストレスを感じさせてしまったり,調査の全体を通して問題になりそうなことはたくさんあります.

でも,今回の調査では,終わった後に「ありがとうね」と言ってくれた方がいました.調査に協力するというのも初めて,カメラで会話の様子を録画されるのも初めて.そんな状況で,会話を途切れさせちゃいけない,できるだけ普段の通りに話さなくちゃ,いろいろ気を遣ってくれた方です.もちろん他の方々も同じように.それでも「ありがとうね」と言ってくれた.特に深い意味はなかったのかもしれませんが,何かそう思ってくれるようなことを調査の中に作れたんだなと思うとこの一言は本当に嬉しかったです.

調査は何かを調べるだけではなくて,協力してくれた人たちとの関係を作ること,これも含めて1つの「調査」なんだなと改めて思いました.

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