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SpolskyのLanguage Management [reviews]

SpolskyのLanguage Management私の所属している研究室のプロジェクトとして言語管理理論を使った論文のリストというのをずっと前から作っているのですが,今期のゼミでは2006年あたりから2008年までの論文をまとめています.いろいろと探していたら見つけたのが以下の書籍.出版は2009年4月なのでつい最近のものです.

  • Spolsky, Bernard. 2009. Language Management. Cambridge University Press.

Spolskyが考えていることを大まかにまとめると,個人が様々な場面(e.g. 家庭,職場,パーティ etc.)でどんな言語使用をするのか,という言語選択に関わること.彼はそのことをLanguage Policyと呼んでいます.またそういった言語選択に関わる要素として「観察可能な言語使用(language practices)」「個々人が持つ言語に対する価値判断(language briefs)」「言語使用と価値判断を更新すること(language management)」の3つを挙げ,モデル理論を構築しようとしています.

展開されている議論についてはひとまずおいておくとして,個人的に気になったのはLanguage Managementという用語の解釈を間違えている(あるいは誤用していると思われる)こと.イントロダクションで言語管理理論の主要論文を参照しつつ話が進んでいくことからもわかるように,LMという用語はSpolsky独自のものではなく,1960年代(さらにさかのぼればポストモダン以前)からのLanguage Policy,Language Planningの議論を批判的に発展させてきた言語管理理論(Language Management Theory)(Neustupný 1994)によるもの.言語管理理論は言語問題を扱うフレームワークの1つで,ミクロからマクロまでの幅広い範囲を射程に収めつつ,問題の処理をプロセスとして体系的に記述し分析することを可能にしていますが,キモは言語問題を処理するプロセスに注目した概念だということだと理解しています.したがってマクロな政策の問題だけでなく,個人的な談話に現れる様々な言語問題処理(e.g. コード・スイッチ,フォリナー・トーク,聞き返し,不満の表明,意見の不一致など),さらにはそれらが表層に現れるまでの背景を統一的な枠組で捉えることができるわけです.

一方でSpolskyが考えているLMは言語選択に関わる段階ないし要素の1つ(言語管理理論との対応をとれば調整の段階)と考えられるため,残念ながらプロセスとしてのLMを矮小化してしまっています.つまりSpolskyが考えている言語選択の問題はLMTのプロセスに「含まれている」はずなのですが,そこを看過してしまったために「言語使用と価値判断を更新する」という調整のプロダクト研究になっているように感じました.

なので,もう少し丁寧に解釈したほうがよかったんじゃないだろうか,そのほうが広がりのある議論になったんじゃないだろうかという感想です.

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