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先行研究レビュー [reviews]

私の現在の研究テーマは「日本手話話者間の会話におけるturn-taking」ですが,最近は改めて先行研究のレビューをしています.どんな研究があって,どんな成果が出ていて,どんな課題が残されているのかをまとめているわけですね.音声言語を対象にした先行研究をまとめる作業もくっついてくるので勉強になって興味深い反面,文献がほとんど英語なのでなかなか思うようには進まないのが辛いところです.むぅ.

さて,私が今のところ取りかかっているのは「日本手話のturn-takingでのTRPはどのように構成され,予期されるのか」というトピック.これを今までの流れの中に位置づけるとするとどうなるか.レビューをしてみてはっきりしたのは以下の3点.

シグナル・アプローチによる研究がほとんどであること
シグナル・アプローチの提出した問いというのは,ターンの交替・継続・終了がどのようなシグナルによって構成されて/調整されているのか,というもので,帰納的方法によって分析をしています.ASLのturn-takingを扱った最初期の研究であるBaker(1977)ではいくつかのコーパスの観察から,いくつかの特徴的シグナルを明らかにしています.後に続く研究の多く(たぶんほとんど)はこの流れに沿ったものとして捉えることができると思います.
一方で連鎖的アプローチによる研究はほとんどないこと
連鎖的アプローチはSSJ(1974)に代表される,turn-takingをプロセスとして捉え,相互行為的なturn-by-turnの調整プロセスを明らかにしようとするものです.音声言語ではこれに続く多くの研究が蓄積されていますが,手話言語ではどうかというと,ほとんどない,と言ってよい状態でしょう.
どの手話言語の研究でも視線の重要性が主張されていること
手話言語でのturn-takingでは,とにかく視線が合っていることがどんなシグナル・ルールよりも優先される重要なファクターであることが述べられています.これは私が研究している日本手話でも同じで,視線が合っていない状態でのturn-takingは起こらないか,失敗しているものがほとんどです.

というのが簡単なまとめになりますが,そうすると,今までに明らかにされてきた諸々のシグナルは,手話言語のturn-takingシステムとどのように関わっているのか,turnの開始・継続・完了の予期がどのように達成されるのかが問われなければならない,という方向で考える必要があるということがはっきりしました.また視線の振る舞いを最上位に据えたルールセットあるいはturn-takingシステムが提示されなければなりません.

それからもう1つ重要なこととして,こういったシステムの問題に加えて,言語管理理論からの接近によって日本手話話者の言語使用の実際を明らかにしたいと考えています.つまり,会話という相互行為場面ではどのようなことが逸脱として留意され,それはどのように評価されるのか.それに対する調整はどのように計画され,実施されるのか,までをturn-takingシステムの問題と併せて包括的に説明することが最終的な目標になります.

ちょーっと風呂敷を広げすぎたかもしれないと思わなくもないですが,なんとか,できる,はず,たぶん.がんばります.

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