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必要なもの

室内楽に限ったことではないのですけれど,曲を演奏しようと思うときに一番大事で必要なものはなんだろうか,ということを考えています.ここで言う演奏というのは「お客さんに聴かれることを前提とした演奏」を指します.友人同士のお楽しみの合わせのようなことにまでちょっかいをだすつもりはもちろんありません.それはそれでとても楽しいことだし,意味のあることだと思っています.念のためお断りしておきます.

これは前々から考えていたことで,ちょっとしたきっかけがいくつかありました.詳細はどうなんだというのはこのコラムと関係ないので割愛しますが,きっかけとなった経験を通してわかったのは「自己満足だけで演奏をしてはならない」ということ.別の言い方をすれば「ちゃんと曲と向かい合うことが大切だ」ということでした.「ちゃんと」といっても漠然としていてわけがわからないので,私が「それは違うんじゃないの」と思ったケースをいくつか挙げて,もう少し具体的に話を進めます.

ケース1) 自分たちが楽しいのでやってみる
合わせてみたら楽しかったので,そのノリだけで演奏会に出演してしまうような場合.そしてやはり自己満足だけで終わってしまうような場合.
ケース2) 自分の技量がどの程度なのかわかっていない
弾きたい曲は弾ける曲だと思っているような場合.そして曲が必要とする技術はついに習得できずに終わってしまうような場合.
ケース3) 自分の腕を過信している
自分の演奏が万人に受け入れられるはずだという根拠のない自信にあふれているような場合.そして「そうではない」という意見に耳を貸さない場合.

私が大切だと思っている「ちゃんと」というのは,この3つのケースと真逆のことを指します.つまり,ノリだけでパブリックな場所に出て行かない,自分の力量をわきまえる,曲に対して自分の力量が足りないと思ったら練習する,自分の演奏が受け入れられないかもしれないということを想像してみる,そして批判に脊髄反射しない,ということ.

まぁここまで書いてきましたが,こういった私自身の態度が過度にストイックで,しかも共演することになった相手には誰彼構わずこれを要求するというのは問題があるというのはうすうす感じていて,自分の要求が相手にとっても妥当なものかどうかにまでは気が回っていないとも言えますね.最近はだいぶわきまえるようになってきたかなと思っていますが,それでもまだ周りから見ればわがままに見えるだろうし,イヤなヤツだと思われても仕方ないかもしれません.だから共演者としては受け入れられにくい部類に入ると思います.

趣味でやってるんだからそこまで要求されても困る.フットワークが重くなるんじゃないか.いろいろ反論はあるかもしれませんが,私のような人間にとっては趣味でやっているからこそいい加減なことをしたくないし,フットワークが軽いことのメリットがメリットではない場合があるわけです.[07/06/08]

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経歴と音楽

室内楽のことに限りませんが,コンサートに行ったときに渡されるパンフレットには,たいてい演奏者のプロフィールが書かれています.誰々に師事とか,誰々のマスタークラスで学ぶとか,どこどこと競演とか,コンクールに入賞・参加とか,いろいろありますね.この経歴紹介に意味があるとすれば,当の演奏者が何者であるのかを初見の人でもわかるようにすること,だと思います.どのようなところで,誰に師事して音楽を学び,どのような評価を受けている人なのかがわかるということは,ひとつの考え方としては,音楽をたのしむための保険になるのだろうと思います. つまり,この人はこれだけの経歴を持つ人なのだからまずい音楽をやったりはしないだろう,あるいは,こんな経歴だしあんまり期待しないで聴くことにしよう,という保険です.この場合,経歴と音楽とが「経歴=原因」→「音楽=結果」という関係になっているのだろうと思います.

この,音楽を聴くときの保険,という考えが妥当なものだとしても,私はこの聴き方には賛成できません.というのも,当の演奏者の音楽を表現することができるのは演奏者の演奏であって,経歴ではないと思うからです.どれだけ有名な人に師事していようが,コンクールで入賞していようが,そのときに聴いた演奏がまずければ何の意味もありません.経歴を積む中で学んだことが演奏に結実するということももちろんあるでしょうけれど,それだってやっぱり演奏からしかわかりません.つまり,経歴と音楽とは「音楽=原因」→「経歴=結果」のはずなんです.

経歴と音楽との関係が保険として機能してしまうことの背景には,クラシック音楽というコミュニティの文化が関係しているのだろうなと思いますが,そのことはまた別の機会にでも考えてみようと思います.[05/09/21]

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室内楽

私が室内楽をかじり始めたのは大学に入ってからです.オーケストラに入っていた時期もあったのですがどうもそのときのオーケストラと合わず(メンバーとは仲がよかったのですが),基本的には ひとりで弾いているのが好きな引きこもりプレーヤーでした.

その引きこもりがなんで人とあわせることにはまりだしたのかというと,こんなに楽しいことがあるのか,という 発見があったからです.たまたま一緒にやっていた人たちに恵まれたというのもあるのでしょうが, 一人でやっているときには考えもしなかったような楽しさがそこにありました.

どんな楽しさかというと,ひとつは相手と会話する楽しさ. 相手が予想を裏切る弾き方をしてきたり,逆に相手はこうやってほしいんだろうな・こうやったら驚くかな,という音楽的なやりとり.これがとても新鮮でおもしろかったというのがあります.もうひとつはそこからばらばらの方向へむかうのではなくて,いろいろなやり方を提案しあいながら ひとつの方向へ演奏を持っていくという作業.これがさらに面白い経験でした.

やっていて楽しいことばかりではありませんが(例えば練習しないといけないとか.うそですけど),自分たちで考えて,創りあげて,形にしようとしたものが(すべてではないにしても)表現できるということが 室内楽の一番の醍醐味だと思っています.

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